生活の批評誌no.5「そのまま書く」のよりよいこじらせ方|発行のお知らせ
特集:「そのまま書く」のよりよいこじらせ方
装画:平田基
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「そのまま書く」から離れたくて、離れられなくて、あいまいなままここまできた。
個人的な体験や感情を直接的な言葉で記述すること、自分について「そのまま書く」ことは、文学において、あるいはこの社会において、どこかうっすらと軽んじられてきたように思う。それでも今、ほんの一部かもしれないけど、小さな個人の小さな声を聞き合おうとする方向へと、この社会は進みつつある。
だが、その流れに勇気づけられながらも私は、「どんどん自分のことを書こう」と手放しに言うことができない。ひたすら何かにためらい、何かを危惧しているのだった。
その警戒心を決して的外れとは思わない。しかしそのありふれた危惧は、少しでも油断すれば根深く私たちの中に巣食う「そのまま書く」ことに対する蔑みへと——それは強い何者かにとって都合がいい——簡単に回帰してしまうだろう。
「そのまま書く」ことをなんのためらいもなく称揚するのでもなく、蔑みとも絶対的に距離を取った、「そのまま書く」に対する別の態度はないだろうか。それはきっと傍目から見ればこじらせた態度であるだろう。ならば追求すべきは、”よりよいこじらせ方”だ。
そう呼びかけて、この号を作った。9作品と1インタビュー、1座談会を収録。
(編集長 依田那美紀)
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■目次(掲載順)
・皮のにおい |Ingvill Kjærstein (イングヴィル・シャースタイン)
・「そのまま書く」をそのまま書く |niina
・政治的な物語から個人的な物語を守り、分有するために |佐々木ののか
・インタビュー:自分語りをさまよって |滝薫
・当世書生気質令和編 |呉樹直己
・返信 ——わたしの〝こじらせ〟について |川口好美
・座談会:フィクションと「そのまま書く」がともにあるために
井上彼方×オーガニックゆうき×依田那美紀
・教室のうしろの席から |原告A
・幸福の表明を破る |依田那美紀
・#147⏺ ⏸ ⏹ |黒嵜想
・十年後の返信 |遠藤のぞみ
・広告:非実用品店めだか
■概要
B5判|縦書き|92頁
企画・編集・DTP:依田那美紀
発行:2022年5月25日
販売価格:1,540円
装画:平田基
中面挿絵:ぶんちん
■感想はこちらへお送りください。
■手売り販売について
・第34回文学フリマ東京にて初頒布予定です。どうぞお越しください。 →終了しました
5/29(日)12:00〜17:00
場所:東京流通センター 第一展示場
詳細▶︎ https://bunfree.net/event/tokyo34/
ブース番号は【テ-11】です。
※あまりたくさんの部数を持っていけず、とはいえ偶然通りかかった人にも手にとっていただきたいので、申し訳ありませんが原則お一人様1冊(お遣いの場合も2冊まで)とさせていただきます。
・第10回文学フリマ大阪に出店いたします。 →終了しました
2022年09月25日(日) 11:00〜17:00
場所:OMMビル 2F B・Cホール
詳細▶︎https://bunfree.net/event/osaka10/
・文学フリマ京都7に出店いたします。
2023年1月15(日) 11:00〜16:00
場所:京都市勧業館「みやこめっせ」 1F 第二展示場B・C・D
詳細▶︎https://bunfree.net/event/kyoto07/
■お取り扱い店舗について
全国の個人書店様を中心にご購入いただけます。編集部による個人通販は行いませんので、遠方の方はぜひ通販を運用されている店舗さんをご利用ください。以後随時更新します。
*最新の在庫状況は恐れ入りますが各店舗様へお問い合わせください。
【北海道】
seesawbooks(札幌市)
KITSUNE BOOKS(室蘭市)
【静岡県】
水曜文庫(静岡市)
HiBARI books&coffee ひばりブックス(静岡市)*通販あり
【東京都】
模索舎(新宿)*通販あり
本屋B&B(下北沢)
SUNNY BOY BOOKS(学芸大前)*通販あり
海と夕焼(国立市)
PASSAGE(SOCIALDIA/デュマ通り4番地)(神保町)
なかなかの(中野区)
SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(渋谷区)
【神奈川県】
BOOK STAND 若葉台(横浜市)
【埼玉県】
つまづく本屋 ホォル(川越市)
【長野県】
books 電線の鳥(松本市)
【愛知県】
TOUTEN BOOKSTORE(名古屋市)*通販あり
【大阪府】
Calo Bookshop&Cafe(大阪市)*通販あり
シカク(大阪市)*通販あり
スタンダードブックストア (大阪市)*通販あり
まがり書房(池田市)
heya(大阪市)
toibooks(大阪市)*通販あり
MoMoBooks(大阪市)
【京都府】
CAVA BOOKS(京都市・出町座内)
誠光社(京都市)
hokabooks(京都市)
ホホホ座浄土寺店(京都市)*通販あり
恵文社一乗寺店(京都市)*通販あり
【兵庫県】
ワールドエンズ・ガーデン(神戸市)
1003(神戸市)
本の栞(神戸市)*通販あり
【広島県】
紙片(尾道市)
古本屋弐拾dB(尾道市)
本屋UNLEARN(福山市)*通販あり
【福岡県】
ブックバーひつじが(福岡市)
【熊本県】
古本と新刊scene(熊本市)
お取り扱いいただいている書店のみなさま、ありがとうございます。
■お取り扱い店舗様募集(7/12更新)
増刷に伴い、『生活の批評誌』no.5をお取り扱いいただける店舗様を募集しております。
条件などに関してはお気軽にお問い合わせください(お取り扱いいただいている店舗様が多数ある東京都に関しては、特にすでにお取り扱いのある区や市・エリアの店舗様からのご依頼に関してお断りする可能性がございます)。
現在お取り扱いがない都道府県の店舗様を大募集しております。特に北陸・九州です。
■お問い合わせ
生活の批評誌編集部
seikatsunohihyoushi@gmail.com
『生活の批評誌』5周年集会 〜「個人メディア」という謎〜
2017年創刊、関西発、“生活と批評を隣り合わせにする”雑誌『生活の批評誌』5周年を記念して、初の“集会”を開きます。
『生活の批評誌』は企画・編集・発行をひとりで担ういわゆる「個人メディア」です。これまで全5号を作り上げてもなお、われながら、この「個人メディア」という形式への“謎“は増えるばかりです。
そこで5周年の節目を存分に活かすべく、この”謎”をめぐって、同じく「個人メディア」の作り手として活動するお二人を招きし、この謎にとことん向き合います。
『生活の批評誌』のこと、お互いのメディアのこと、“編集“のこと、聞き合い話し合う二時間。それぞれ年は10歳違い、年代も受容してきたカルチャーも異なる、それでいてお互いの媒体の読者でもある三人の初の共演です。
『生活の批評誌』なんだそれ?という方も、長年の読者様も、5周年の節目のお祝いに、反省に、今後の作戦会議に、どうぞお立ち会いください。(『生活の批評誌』編集長 依田那美紀)
★参加者の方には特典として『生活の批評通信』5周年記念号をプレゼント!
▼チケット購入はこちら▼
https://seikatsuhihyou5.peatix.com/
■日時
2022年9月17日(土)18:00〜20:00 (開場は20分前)*アーカイブあり
■会場
Calo Bookshop & Cafe (大阪市西区江戸堀1-8-24 若狭ビル5階)
(大阪メトロ四つ橋線「肥後橋」駅より1分/御堂筋線「淀屋橋」駅より5分)
■参加費
会場・オンラインともに 1,200円 (会場は別途ドリンク代必要)
*参加者の方には特典として『生活の批評通信』5周年記念号をプレゼント!
*書籍付きチケットもあり
■登壇者
・鈴木並木(普通に読める日本語の雑誌『トラべシア』発行人)
1973年、栃木県生まれ。東京都在住。派遣労働者。1990年代後半から個人発行のコピー誌・リソグラフ誌をいろいろつくって無料で配布してきた。2016年、初の有料メディアとして、普通に読める日本語の雑誌『トラベシア』を創刊。現在まで6号を発行。最近はおもに、これまでの失敗を反省しながら今後の方向性を模索する活動をしている。座右の銘は「名より実」。嫌いな言葉は「DIY精神」「でも、やるんだよ」。
・山本佳奈子(ウェブマガジン『Offshore』・アジアを読む文芸誌『オフショア』編集)
1983年生まれ、神戸市在住。2011年に香港、北京、上海、香港、バンコク等を旅行し、各地に住む音楽家やアーティストらと交流を深める。そのとき現在進行形のアジアを日本語で発信するメディアがないことに気づき、ウェブマガジン『Offshore』を立ち上げた。特にアジアのインディー音楽や地下音楽を、記事やイベントを通して紹介してきた。2022年からは、アジアを読む文芸誌『オフショア』としてリニューアル。寄稿者を招き年二回の刊行を予定している。
・依田那美紀(『生活の批評誌』編集長)
1993年石川県生まれ。地方国立大学卒業後、大阪府を経由して現在は京都府在住。大学時代に学生主体のフリーペーパー制作団体に所属、社会運動にも片足突っ込む。2017年より「生活」と「批評」を隣り合わせにすることを目指す雑誌『生活の批評誌』の編集長(ひとり編集部)。Zine『シスターフッドって呼べない』(2019)を発行。井上彼方編『社会・からだ・私についてフェミニズムと考える本』(社会評論社,2020)に参加。
生活の批評ラジオ(仮)第6回 ゲスト:宇野湧さん
生活の批評誌編集部が非実用品店めだかにてお送りする「生活の批評ラジオ(仮)」第6回のお知らせです。
気づけばちょうど半年…ですか。続きましたねえ。
いろんな人とラジオ名目でお近づきになれて嬉しい限りです。前回の小澤さんの告知の際にブログを書いて楽しかったので、今回も書くことにします。
さて、第6回のゲストは、
【陶芸民主化ハンドブック「デモクラポタリー」】を提唱する、宇野湧さんです。
宇野さんは先日、非実用品店めだかで開催した生活の批評誌no.4の即売会に来てくださり、批評誌を買ってくれました。その時は陶芸をやっている、っていうこととか、表紙デザインのいいことみさんと知り合いであることとか、他愛もないことをお話してさよならしたのですが(めちゃくちゃ楽しそうに非実用品を見る姿が印象的でした)、お帰りになったあとTwitterのプロフィールを拝見したら、陶芸民主化ハンドブック「デモクラポタリー」との文字が書いてあり、こりゃなんだ?!と。
陶芸民主化ハンドブック「デモクラポタリー」。どうやら宇野さんのプロジェクトのようで、サイトには、「施設や設備に頼らず独立した環境で陶芸ができる方法を探求します。そうすることで、実質的に陶芸に携わる人だけでなく誰もが陶芸をできるようになると考えております。」との説明書きが。ソフトに言えば、「陶芸は誰にでもできるよ!」ということであることは確からしいのだけど、それだけでは受け取らせない、どちらかといえば、「陶芸ができる自由を!」と強く呼びかけるような声明文のようにも読めてしまうのです。
人がなにかを行うとき、だれかの協力によって物事は進行します。ですが、環境や制約によって叶わないこともあります。どの分野でも往々にしてあるとは思いますが、たびたび、極端な理想が制約によってハネられます。
陶芸分野での見聞を挙げますと、窯の設置や土の注文の際、たいてい知識や経験を蓄えた業者に相談します。ただ、相談者は業者がある程度しつらえたものを選ぶことが多いです。このような関係性は陶芸教室にもみられます。焼成や材料費、受講時間等の制約によって制作が制限されるように、運営側の出す条件と体験者側の希望に折り合いがつけられることがあります。似たような例は、職業訓練校や芸術大学といった機関にもあります。(※3ただ、このようなことを意識されてか、近藤南さんは、そういった制約を出来るだけ抑えた「フリースタイル陶芸」を活動されています。特に、体験者がなにをつくるかという点を大事にしているように見受けられます。)
こうした陶芸界隈の関係性について、心の底で違和感を覚えていました。私は芸術大学に在籍しているのですが、幾らかの制約に加え、新型コロナ感染症による影響でますます制約が増えました(もちろん大学の数々の対応には感謝しています)。どんな分野でも何かと制約はついてまわるので仕方のないことですが、なるべくフリーな環境をつくりたいと常々考えていました。
こういった経緯をへて、陶芸界隈における環境や、些か上下のある関係性から解放されたいという気持ちと昨今の状況が重なり、私はデモクラポタリーを考案することとなりました。そして、これは対等な関係性によって成り立つものと考え、また、誰かと協力して叶えたいと思うようになりました。デモクラポタリーという活動は、新型コロナ感染症による状況への応答であり、陶芸界隈の環境や関係性から自身を解放しようとする行為なのです。また、だれかと私が対等な関係のうえで協力し、一から物事を行う相互的な取り組みです。
ーー宇野湧「デモクラポタリー(陶芸の民主化)の発表にあたり、経緯や活動の目的についてお話しします。」より。下線引用者。
https://nyax6yousaylunch.wixsite.com/unou/statementaboutdemocratizepottery
ここまで読んで、「民主化」という一見不釣り合いな仰々しい形容詞に納得します。「誰にでも陶芸はできるよ!」といった”誰にでも開かれた陶芸”の手放しの提唱ではなくて、ここには、”ではなにが不可能にさせているのか?”という問題意識が込められているように思います。一見「対等な関係性」、かのように見える、何かを生み出す行為の中にある、束縛やヒエラルキー。個人の努力のように見えて、環境が左右しているもの。「陶芸ができる自由」は、なんらかの不断の努力を必要としてしまうのかもしれません。危うい時代、自由に物を書き、届けることがそうなってしまうように。そうして、それを、私たちの手に取り戻そうという運動なのであれば、これは是非お話を聞いてみたい!ということで開催します。
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生活の批評ラジオ(仮)第6回
ゲスト:宇野湧さん
日時:10月31日(土)18時〜19時(ツイキャスにて放送)
場所:非実用品めだか (京都府京都市上京区突抜町434−2)
★公開生放送予定!ぜひ来てね
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生活の批評誌no.4が買えるお店
細切れにツイッターで告知している、「生活の批評誌no.4が買えるお店」。
数も少しずつ増えてきたので、一覧にまとめます。
今号は増刷が難しいため、売り切れ次第終了です。また、編集部による個人通販は今回行いませんので、遠方の方はぜひ通販を運用されている店舗さんをご利用ください。
以後増える場合は随時更新します。
*最新の在庫状況は恐れ入りますが各店舗様へお問い合わせください。
生活の批評誌no.4が買えるお店 10/11現在
【静岡県】
水曜文庫(静岡市)https://twitter.com/suiyoubunko1
【秋田県】
乃帆書房(秋田市)https://nohoshobo.stores.jp/
【長野県】
books電線の鳥(松本市)
https://toberunca.jimdofree.com/
【東京都】
模索舎(新宿)*通販ありhttp://www.mosakusha.com/newitems/2020/09/no4_2.html
本屋B&B(下北沢)http://bookandbeer.com/
SUNNY BOY BOOKS(学芸大前)*通販ありhttps://sunnyboybooks.net/items/5f69ab428f2ebd1b1e994904
【大阪府】
Calo book shop&Cafe(大阪市)*通販ありhttp://calobookshop.shop-pro.jp/?pid=154231144
ショップheya(大阪市)https://www.instagram.com/heyaosk/
シカク(大阪市)*10月下旬より店頭に並びますhttp://uguilab.com/shikaku/
長谷川書店(水無瀬駅)https://twitter.com/hasegawabooks
まがり書房(池田市)https://www.magarishobo.com/
【京都府】
待賢ブックセンター(京都市)*通販ありhttps://kaifusha-books.stores.jp/items/5f6daa4693f6191d9ed894d0
CAVA BOOKS(京都市・出町座内)
【兵庫県】
ワールドエンズガーデン(神戸市)https://twitter.com/worldendsgarden
1003(神戸市)*通販ありhttps://1003books.stores.jp/items/5f71b59b8f2ebd0154d42f35
KITSUNE BOOK&ART(神戸市)https://www.instagram.com/kitsunebookandart/
【鳥取県】
汽水空港(松崎)*通販ありhttps://www.kisuikuko.com/item/00200/?mode=pc
【広島県】
紙片(尾道)https://shihen.theshop.jp/
古本屋20dB(尾道)古本屋 弐拾dB(藤井) (@1924DADA) | Twitter
【沖縄県】
洋(島尻郡)https://www.instagram.com/yo_haebaru/
お取り扱いいただいている書店のみなさま、ありがとうございます。
生活の批評ラジオ(仮)第5回のお知らせ
月に一度のお楽しみ、生活の批評ラジオ(仮)のお知らせです。
京都市は上京区にあります非実用品店めだかさんの片隅をお借りして、私が話したい誰かをお呼びし60分、ツイキャスを利用した公開生放送でお送りしております。
これまでのアーカイブはこちら:https://twitcasting.tv/seikatsuhihyou/show/
8月は喪に服すためにおやすみしましたが、9月はやります。
記念すべき第五回。ゲストは、「海響舎」主宰、編集者の小澤みゆきさんです。
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なぜ”ひとり”なのか、なぜ”雑誌”なのか?
〜『海響』の小澤みゆきさんとしゃべってみる〜
日時:2020年9月13日(日)18時〜19時
ゲスト:小澤みゆきさん(「海響舎」主宰/編集者)
場所:非実用品店めだか(小澤さんはリモート出演)
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『かわいいウルフ』、という同人誌が出るということを初めて知ったのは、小澤さんが本誌を制作中であることを書いたブログを、知り合いの誰かがシェアしていて、それを見た時でした。確か阪急宝塚線石橋駅のホームだったと思います。
ヴァージニア・ウルフについての本が出るようだ、しかもウルフのことを熱烈に愛しているであろう人による個人的な編集で。刊行に向けた熱量はそのブログからも伝わってきて、その数ヶ月後、発売されてから、SNSでメディアで、『かわいいウルフ』はやはりばばっと話題になっていて、増刷のタイミングで急いで本町のtoibooksで購入。開いてみると、愛も、知識も、「同人誌」というものを器にしてこんなにも溢れるものなのかと、仰天しました。本の中にある、いいなあと思える文章や言葉を見つけつつ、同時に冊子全体になにかへの憤りのようなのようなものも走っているように感じ、いやそれは、何かを形にする執念の裏側は前向きな怒りがある、と思いがちな私の深読みかもしれませんが、とにかく引きつけられました。
その後、小澤さんの動向を追いかけていたわけですが。
そこから数ヶ月たち、今年の6月に小澤さんが刊行された『海響一号大恋愛』を購入・拝読した時、「”ひとり”で誰かを巻き込みながら”雑誌”を作っている」という点において、私が作る『生活の批評誌』と、どこか共通点があるような、と同時に興味深い差異があるような気がしました。
この場合の”ひとり”とは、あくまで複数人による編集を前提とした編集部を置かないという意味で(「ひとり」では雑誌はできませんので)、私も小澤さんも、編集の様々な判断を自分ひとりに集中させつつ、それでも誰かとつながりながら雑誌を作っているように思います。規模だったり体裁だったり、もちろん『生活の批評誌』との物理的な違いはあるのですが、お互いどういう必然性で”ひとり”で作っているのか、どういう判断や手法で誰かを巻き込み、コミュニケーションしているのか、また、それが単著でなく、雑多で、多声的な”雑誌”でなければならないのはなぜか。自分の中にわだかまっていたものを含めて、お話してみたいと思いました。小澤さんにはお会いしたことはないけれど、ツイキャスに誘ってみよう!ということで、お願いしたところお引き受けいただき、一時間お付き合いいただきます。
当日は、13時〜17時30分ごろまで、めだかにて『生活の批評誌』即売会もやっていますので、ぜひいらしてください。
(『大恋愛』の中だと、甘木零「古風な恋の物語」と雪田倫代「海辺の歌と恋」が今は心に残っています。あと、匿名の恋愛のエッセイを読むこのくすぐったい楽しさはなんでしょうね…)
生活の批評誌no.4「わたしたちがもちうる”まじめさ”について」発行のお知らせ
特集 わたしたちがもちうる”まじめさ”について
カバーデザイン:いいことみ (@e_ocoto)
みんな、自分の”まじめさ”とどのように付き合っているのだろうか。
気になって、しょうがなくなった。
それはいつからだったか、”相手に対して自分が「他者」であることを、どこまでも自覚したうえでとる不干渉な態度”というものがあって、どうやら私はそれを、”まじめさ”と呼んで大事にしているらしい、ということに気づいた頃からだったか。
傷つけたくなくて、触れないこと。大事な部分を侵したくなくて、踏み込まないこと。
そんな”まじめさ”を手放したくはないけれど、それを握り締めたままどうすれば誰かと一緒にいれるのか、だんだんわからなくなった。
だから、問いかけた。あなたは、自分の”まじめさ”とどのように付き合っていますか?
人とかかわるときの危うさを手放さずに、どのようにして、誰かとともにいますか?
わたしには見えない、この世界のあちこちで静かに試行錯誤されているであろう誰かの工夫と実践を知りたかった。ここにあるのは、その応答。であるような、そうでないような。
でも、そのどれもが、その人の大事な部分に触れているような気がする。
10人による文章・漫画・インタビューを収録しています。
B5判|縦書き|68ページ
企画・編集|依田那美紀(*諸事情により改名)
発行日:2020年8月10日|発行部数:300部
販売価格:1,210円
*手作業の工程を挟むリソグラフでの印刷のため、一品一品若干の差がございます。
乱丁、落丁がある場合はお取りかえいたします。
■目次(掲載順)
A子|ゆりか
炎・だいじょうぶですか・火|大前粟生
欲望とその対策、生きづらさと秘密の通路|稲岡奈由
暗い・明るい・おなじ場所 /わたしだけの湖 |塩川愛
解体の方法 ー「女のことば」と高橋源一郎 |依田那美紀
インタビュー
いまここにある言葉を、書き記す —語りをめぐる”まじめさ”の話— |瀬尾夏美
ケーキを食べる練習 |梅澤奈央
音楽の鳴る場所 |nu
死よ人の望みの喜びよ |門戸大輔
Null — 何もない私と関係性 |餅巾着
執筆者一覧
広告:非実用品店めだか
編集後記
編集部による個人通販は今回行いませんので、遠方の方はぜひ通販を運用されている店舗さんをご利用ください。最新の在庫状況は恐れ入りますが各店舗様へお問い合わせください。
(在庫状況がわかるもののみ「売り切れ」を記載しております)
・乃帆書房(秋田市)https://nohoshobo.stores.jp/
・水曜文庫(静岡市)https://twitter.com/suiyoubunko1
・模索舎(東京都・新宿)*通販あり http://www.mosakusha.com/newitems/2020/09/no4_2.html
・本屋B&B(東京都・下北沢)http://bookandbeer.com/
・SUNNY BOY BOOKS(東京都・学芸大前)*通販あり(売り切れ)
https://sunnyboybooks.net/items/5f69ab428f2ebd1b1e994904
・Calo book shop&Cafe(大阪市)*通販あり(売り切れ) http://calobookshop.shop-pro.jp/?pid=154231144
・ショップheya(大阪市)https://www.instagram.com/heyaosk/
・シカク(大阪市)*通販あり(売り切れ) https://shikaku-online.shop-pro.jp/?pid=154721985
・長谷川書店(大阪府・水無瀬駅)https://twitter.com/hasegawabooks
・まがり書房(大阪府・池田市)https://www.magarishobo.com/
・待賢ブックセンター(京都市)*通販あり(売り切れ) https://kaifusha-books.stores.jp/items/5f6daa4693f6191d9ed894d0
・CAVA BOOKS(京都市・出町座内)http://cvbks.jp/
・誠光社(京都市)https://www.seikosha-books.com/
・ワールドエンズガーデン(神戸市)https://twitter.com/worldendsgarden
・1003(神戸市)*通販あり(売り切れ) https://1003books.stores.jp/items/5f71b59b8f2ebd0154d42f35
・KITSUNE BOOK&ART(神戸市)(売り切れ)https://www.instagram.com/kitsunebookandart/
・汽水空港(鳥取県・松崎)*通販あり(売り切れ) https://www.kisuikuko.com/item/00200/?mode=pc
・紙片(広島県・尾道)https://shihen.theshop.jp/
・古本屋20dB(広島県・尾道)古本屋 弐拾dB(藤井) (@1924DADA) | Twitter
・洋(沖縄県・島尻郡)https://www.instagram.com/yo_haebaru/
■価格のこと
これまでの1〜3号の価格設定に比べて、少し高めの設定になっています。
「生活」と銘打っている限り、気軽に、週刊誌を買うように買って欲しいという思いもあり、
これまで値段はなるべく抑えるようにしてきました。
ただ、私自身が全く「気軽に」作っているわけではないということ、また、扱っていただいている書店さんの販売・発送の労力に少しでも見合う価格設定にしたいと考え、今回の見直しに至りました。
「中身を見ないと買うかどうか判断できないよ」という方もいらっしゃるかと思います。そういう方は、まだ直接お買い求めいただける店舗さんは全国津々浦々とは言い難いですが、少しでも近くのお店で見ていただくなどして、あるいはちょっとしたギャンブルのつもりで、今後実施予定の通販での購入にチャレンジしていただければ幸いです。
どれも編集長依田がおります。ご都合がよければぜひお越しください。
・8月30日(日)12時〜19時
超超先行販売@非実用品店めだか(京都市上京区突抜町434−2) →終了
・9月6日(日)11時〜17時
文学フリマ大阪(天満橋OMMビル)*8/12現在開催予定 →終了
・2021年1月17日 11時〜16時
→文学フリマ京都(京都みやこめっせ) *11/16現在開催予定
すこしでもご興味がある方、詳しい内容をお知りになりたい方は、
*バックナンバーに関しては在庫無し
生活の批評通信——安定させないための方策
憤りと怒りと警戒心が、生活の大部分を占めつつあります。神経を張り詰めて国へ情勢へ感染者数へにらみをきかせていたかと思えば途端になにもかもどうでもよくなる起伏の激しさ、何も考えたくなくなる小さな発作、ここ数十年、この小さな発作が積み重なって今の事態が引き起こされたのであるならば、さしあたって少なくとも私は、この発作と起伏を注視するしかないと腹を決めています。
今年の1月に発行した「生活の批評通信」の巻頭言、これが当編集部の基本的なスタンスです。転載します。
〇安定させないための方策
「自衛隊中東派遣」と書かれたニュースをタップするとそこには、涙を流す妻と子供を抱える隊員が映っていた。これは確かに起こっていることなのに、本当に起こったことなのか、と疑いたくなっている自分を発見する。戦争が起こりませんように、とベッドで毎晩祈っていた幼いころの私がこの報道を見たら泣いて狂うだろう。今、どうやら自分は正気であり、昼ご飯のことを気にしながら机に座って文章を書いている。
二〇二〇年。個人の小さな営みである「生活」と大きな政治状況や社会の変動、その両者の乖離とズレ、欺瞞について、一層問い問われ続ける一年になる予感がする。そのズレをどうにか解釈可能なものに落とし込めようとするとき、手に取りやすいいくつかの立場がある。激動の最中だからこそ——自身の些細な生活を”丁寧に”遂行すべきだという立場、遠い国の残酷な出来事を前に自分の生活の他愛もなさを反省する立場。生活の批評誌はそのどちらにも潜んでいる「安全性」を警戒したい。目指すのは「生活」と「社会」の関係を決して安定させないことだ。言葉を投げ出し応答を待つ。投げ出されたものに応答する。その応酬を顕在させ、不安定な関係を際限なく続けていくこと。その役目を担いたいと思う。
ここには、ネットで呼びかけ公募した「生活の批評」が収録されている。「雑誌」よりもインスタントで速度の速い「通信」として、生活の際限なき不安定さを受け止める一助になれば嬉しい。
*公募の呼びかけに原稿をお寄せいただいたみなさま、ありがとうございました。
引き続き一部180円(送料込み)でBoothにて販売中です。