特集:「そのまま書く」のよりよいこじらせ方
装画:平田基
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「そのまま書く」から離れたくて、離れられなくて、あいまいなままここまできた。
個人的な体験や感情を直接的な言葉で記述すること、自分について「そのまま書く」ことは、文学において、あるいはこの社会において、どこかうっすらと軽んじられてきたように思う。それでも今、ほんの一部かもしれないけど、小さな個人の小さな声を聞き合おうとする方向へと、この社会は進みつつある。
だが、その流れに勇気づけられながらも私は、「どんどん自分のことを書こう」と手放しに言うことができない。ひたすら何かにためらい、何かを危惧しているのだった。
その警戒心を決して的外れとは思わない。しかしそのありふれた危惧は、少しでも油断すれば根深く私たちの中に巣食う「そのまま書く」ことに対する蔑みへと——それは強い何者かにとって都合がいい——簡単に回帰してしまうだろう。
「そのまま書く」ことをなんのためらいもなく称揚するのでもなく、蔑みとも絶対的に距離を取った、「そのまま書く」に対する別の態度はないだろうか。それはきっと傍目から見ればこじらせた態度であるだろう。ならば追求すべきは、”よりよいこじらせ方”だ。
そう呼びかけて、この号を作った。9作品と1インタビュー、1座談会を収録。
(編集長 依田那美紀)
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■目次(掲載順)
・皮のにおい |Ingvill Kjærstein (イングヴィル・シャースタイン)
・「そのまま書く」をそのまま書く |niina
・政治的な物語から個人的な物語を守り、分有するために |佐々木ののか
・インタビュー:自分語りをさまよって |滝薫
・当世書生気質令和編 |呉樹直己
・返信 ——わたしの〝こじらせ〟について |川口好美
・座談会:フィクションと「そのまま書く」がともにあるために
井上彼方×オーガニックゆうき×依田那美紀
・教室のうしろの席から |原告A
・幸福の表明を破る |依田那美紀
・#147⏺ ⏸ ⏹ |黒嵜想
・十年後の返信 |遠藤のぞみ
・広告:非実用品店めだか
■概要
B5判|縦書き|92頁
企画・編集・DTP:依田那美紀
発行:2022年5月25日
手売り販売価格:1,400円(悪税抜き)
装画:平田基
中面挿絵:ぶんちん
■販売について
・第34回文学フリマ東京にて初頒布予定です。どうぞお越しください。
5/29(日)12:00〜17:00
場所:東京流通センター 第一展示場
詳細▶︎ https://bunfree.net/event/tokyo34/
ブース番号は【テ-11】です。
※あまりたくさんの部数を持っていけず、とはいえ偶然通りかかった人にも手にとっていただきたいので、申し訳ありませんが原則お一人様1冊(お遣いの場合も2冊まで)とさせていただきます。
・全国の個人書店を中心に委託販売をお願いする予定です。
詳細は決まり次第、本ブログおよびTwitterに掲載いたします。
■お問い合わせ
生活の批評誌編集部
seikatsunohihyoushi@gmail.com